積読家の逆襲

私以外の人が書きえたものなんて無意味なんじゃないか.

一人読書会あるいは平行読書会および魔術について

 ご無沙汰しておりますが私は更新が滞ったことを謝ったり嘆いたりしたくないので悪しからず.過ぎた時を嘆くのは無駄だって,何か古代ギリシアの詩人とかも言ってたような気がする.

 

 相変わらず積読の山が虚空へと伸びていくばかり読書は遅々として進まない.今やらなきゃいけないことを優先しなければいけないのは止むを得ないとしても,数年後の逆襲のためには今からこの気詰まりな山をいくらかでも切り拓いていく必要がある.どうやったらコンスタントに読み進めることができるだろうか.

 そうだ,読書会をやろう.しかし読書会をやるためには①テキストあるいはテーマを決め,②関心をともにするメンバーを集め,③日程・場所・内容などを慎重に調整する必要がある.とっつきやすいテーマであれば人も集まるし具体的な内容も話していればまとまってくるだろう.しかし私の今の関心ごとは広く耳目を集めるようなものではない.さらに仮にメンバーが集まったとしてもおそらく時と場所をともにするのは不可能である.

 そんな私にお誂え向きなのが一人読書会である.やり方はトッテモカンタン.まず自分の独断と偏見に基づいてテキスト・テーマを決定する.それに基づいて「◯◯読書会」あるいは「××研究会」と名前をつけるとそれなりに恰好がつく.続いて告知.読書会の時間・場所・そしてテキストの該当箇所を予め Twitter などで告知する.一人だからメンバーを集めも時空間の指定も必要ない筈なのだがこれが結構大事なのだ.というかこれをやらないと一人で本を読んでるのと同じになってしまう.時間と場所を指定することで当日読む気運が高まっていなくても実際その場に行くことで集中力を高めることができるようになる.さらに告知しておけばそれが一種の約束になるので守らないと周囲の人にこいつは木偶の坊なんじゃないかと思われる可能性がある.ただし,守らなくても相手 (誰?) に迷惑がかかるわけではないので予定が入ってしまったら遠慮なく休会にすればいい.そして読み終わったら内容についても同様に報告をする.アウトプットの行為自体によって勉強した内容の定着をはかるとともに動もすれば承認欲求を満たすこと,さらに周囲の人の関心を呼び起こして勉強会に誘うことが可能になる.

 さて,ここでメンバーが見つかったとしてもおいそれと普通の読書会に移行するのは味気ないので(というかそれは基本的にできないという前提なので)「平行読書会」というものを考えてみたい.一般的な読書会はテキストの章ごとに担当者を決めて順に発表するという形式であるが,平行読書会では同じのをやってもしょうがないので同じテーマで別々のテキストを指定する.興味あるテーマだから買ってみたけどあまり読む気しないなあという積読本を指定して相手にやってもらえれば願ったり叶ったりである(相手の気持ちは知らない).お互いのペースで読んで章ごとに一人の時と同様に報告をする.相手が読んでいないことが前提になるので,ある程度の共有知識は前提とするにしても簡潔でわかりやすい要約を作成することが求められる.相手はそれを読んだ上で質問・感想をコメントする.時間の制約がないのでここでなされた質問に対する回答を充分時間をかけて整理することができるのも平行読書会のメリットかもしれない.最後に,全員が一冊読み終わったところで一度だけ一同に会する時間を作って美味しいケーキでも食べながら比較検討するのも悪くない.

 (ここで紹介した「一人読書会」に関して示唆を与えてくれたのは七草さんの記事

一枚: 読書会のご案内

である.記して感謝したい)

 

 じゃあ,まずは一人読書会するよ.

 名前はどうしようか.最近錬金術について Twitter でうにゃうにゃ言ってるけど,錬金術に限らず「非科学」「オカルト」とされているものに心が傾いている.しかし「錬金術勉強会」だと金儲けみたいだし「オカルト研究会」を名乗ろうものなら胡散臭いことこの上ない(英語の "Occult" と日本語の「オカルト」の意味のギャップにはかなり残念なものがある).このテーマに関して Oxford Univ. の A Very Short Introductions シリーズを探してみると最も近いのは "Magic" である.

 

 

Magic: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)

Magic: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)

 

 

 ということで「魔術史読書会」にしようと思う.「魔術」という日本語は "magic" と比べて意味のズレがあるが丁度いい日本語がないので次善の策としてこれを用いる.ただの「魔術」ではなく「魔術史」としたのは魔術と呼ばれるものの体系だけではなくそれが生まれ発展していった歴史的・社会的背景についても焦点を当てたいという意識による.「魔術」というものは我々から切り離されたものではなく現代の我々の日常の中にも位置づけられるものなのではないかと私は思っている.現在も魔術信仰は存在するし,それが深刻な事件を巻き越していることは少し世界のニュースを検索すればおわかり頂けるだろう.それらにしてもを「非科学的」だとか「教育の不足」と言って片付けてしまうのはあまりにも惜しいし,そんな見方をしているうちは解決されることはないだろう.Paul Feyerabend "Against Method" の言葉を借りれば "There is no idea, however ancient and absurd, that is not capable of improving our knowledge" 「いかに古く馬鹿げたものであっても我々の知識を改良する能力を持たないものはない」のである.

 

Against Method

Against Method

 

 

 少し脱線したが読書会としては科学と魔術の間にほとんど境界がなかった西洋の中世からルネサンスを扱ったこれを取り上げようと思う.

 

魔術的ルネサンス―エリザベス朝のオカルト哲学

魔術的ルネサンス―エリザベス朝のオカルト哲学

 

 

  思いつきで始めたものなのでテキストについては今後変える可能性があるがとりあえず初回はこれでやります.というわけで第一回魔術史読書会のお知らせです.

 

日時: 6/2 9:00〜

場所: どこかしらのカフェもしくはカフェめいたところ

内容: フランシス・イェイツ『魔術的ルネサンス』(内藤訳)の冒頭から第四章まで

 

 万が一興味を持った方がいらっしゃいましたら Twitter @cacapa_i までご連絡ください.